ヴァイオレット・エヴァーガーデン(TVシリーズ)

2021年2月25日

総評
作画:★★★★★
ストーリー:★★★★★
泣ける度:★★★★
笑える度:★★

感想
神アニメ。あまり使い慣れない言葉だが、僕にとってこの作品は、まさにその言葉が相応しいものだった。

戦争で兵器として戦っていた少女が、戦後の世の中で人々の手紙を代筆する仕事をしていく中で様々な感情を学んでいく物語。全13話を貫くメインのストーリーもありつつ、各話は基本的に1話完結の形式となっている。

個人的には、この構成で観た人の感情を強く揺さぶるものを作るのはとても難しいと感じている。作品に感動を覚える背景には、登場人物の過去や心理描写など、共感や感情移入を促す十分な積み重ねが必要だと思うし、それを観る人に与えるには、アニメ1話分の30分足らずの時間ではどうしても足りないと思うからだ。

しかし、このアニメはそれをやってのけた。そして、毎話毎話、単純に「泣ける」だけでない様々な種類の感動を与えてくれた。

キャラクターやストーリー構成が素晴らしいことは言うまでもないが、ここまでの作品に仕上がった背景として、僕は何よりも圧倒的に作りこまれた世界観があると思う。


物語の舞台は架空の世界だが、作中の建物や技術(機関車や電話がまさに普及しようとしている、など)を見ると、19世紀後半~20世紀初頭あたりのヨーロッパをモチーフにしていると思われる。
その世界を描くとにかく作画が素晴らしい。作中に描かれる美しい街並みや雄大な自然は、架空の世界にもかかわらずどこか現実味のある、「ここに行ってみたいな」と思わせる世界を見事に作り上げている。

そして、自動手記人形という仕事。人々の思いを代筆するという、現代には到底似つかわしくない仕事が、とても魅力的に描かれている。今は送ることが少なくなった手紙への懐古的な思いもあるだろうが、様々な人の様々な思いを言葉にして繋ぎ、感謝される主人公を見ていると「なんて素晴らしい仕事なんだろう、こんな仕事をしてみたい」と羨ましくさえ思えてくる。

独創的だが親しみの持てる世界観を素晴らしい作画で表現し、その舞台上で毎話毎話が宝物のようなストーリーが展開される。すべての要素がこの作品を神アニメ足らしめている所以だと思う。